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中野満の日記

「神事を経営に活かす」という視点

2025.01.07 Tue

新しい年の始まりに

元旦に近くの氏神様へ初詣に出かけました。商売繁盛、無病息災、家内安全……祈願することはたくさんあります。普段は静かな神社も、この日は多くの参拝者で賑わい、お正月らしい華やかな雰囲気に包まれていました。

皆さま、年末年始のお休みはゆっくり過ごされましたでしょうか。昨日から仕事が始まり、慌ただしい日常が戻りつつある方も多いことと思います。また、年始のスタートとして、各社それぞれのしきたりに基づき、特別な儀式から仕事を始める会社も少なくないのではないでしょうか。私の会社でも、休み中には個人で氏神様に参拝し、仕事始めの昨日は神棚に手を合わせ、新しい一年をスタートさせました。

ここで「神事を経営に活かす」という考え方について触れたいと思います。これは私の恩師である田久保善彦氏(グロービス経営大学院研究科長)から学んだものです。田久保氏の著書『長寿企業はなぜ栄え続けるのか』では、サスティナブルな企業を対象にした調査を通じ、長寿の条件を多角的に分析しています。その中でも、経営を支える3つの重要な要素の一つとして、「神事を経営に活かす」という視点が紹介されています。

経営における「神事」の意味

著書の中で印象に残ったのは、ある工場のマネージャーの言葉です。「工場で最も大切なことは安全を確保することです。99.9%までは論理的に考え、様々な対策を講じることで事故を防ぐことができるかもしれません。ただ、最後の最後は人間ではどうすることもできない領域があるのです。そこに正面から向き合う必要があります。」この言葉に、私は非常に感銘を受けました。人智を超えた「神の領域」というものが確かに存在すると感じます。だからといって、すべての会社に神棚を祀るべきだと言いたいわけではありません。しかし、長く企業を続けていくためには、目に見えない力、創業者への感謝や神様への畏敬の念、と向き合うことで、謙虚さを育み、内発的なガバナンスが働くのではないでしょうか。

神事・祭事がもたらす効果

田久保氏の著書では、こうした考え方を「神事・祭事がもたらす効果」として次のように述べています。リーダーと社員が神事・祭事を型のように継続することで規範が生まれ、組織に「自律」が浸透する。また、独りよがりになりがちな社長や創業者一族へのガバナンス的な効用もある。具体例として、社員全員で神棚に一糸乱れず二礼二拍手一礼を行うことで、リーダーとしての身が引き締まり、「お天道様に恥じない行動をしよう」という気持ちが芽生えるといいます。この姿勢に社員が合わせる行為は、リーダーを中心とした一体感を育み、さらに毎日の掃除やラジオ体操といったルーティンワークにも規律をもたらし、組織の自律へとつながるとされています。

自律から生まれる組織文化

会社の風土や文化は、「自律」から生まれるものです。そして、その根底には「感謝」の気持ちや抗うことのできないものへの祈りがあり、それが経営を支える土壌を形成しているのではないでしょうか。こうした視点は、長寿企業だけに必要なものではありません。むしろ、小規模な組織だからこそ実践しやすく、10年後、20年後の未来の自社文化を育むきっかけになると考えられます。

 新たな年に向けて

新しい年の始まりに、「神事を経営に活かす」という視点を取り入れてみてはいかがでしょうか。こうした考え方が、組織運営に新たな視座を提供し、日々の経営をより充実させるヒントになるかもしれません。皆さまの参考になれば幸いです。

 

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