今週の中野満
事業継続力強化計画策定支援の研修を受講しました
「事業継続力強化計画」とは、「企業が災害や非常事態に直面しても事業を継続・回復するための備えを強化し、企業の持続的成長を支える計画」です。端的に言えば、「非常時における事業の継続と迅速な復旧を支える計画」と言えます。さらに具体的に言うなら、災害発生後に「いかに早く事業を再開できるか、そのための準備は整っているか」という問いかけに応えるための計画です。実際には、事業者様におかれても本業の忙しさから、なかなか計画づくりが進まないことが多いかと思います。そこで、我々認定支援機関が計画づくりのサポートをいたします。その一環として今回、策定支援のための研修を受講いたしました。
いつ発生するかわからない「100年に一度の大地震」とされる南海トラフ地震。そのリスクは「いつ起きてもおかしくない」とまで言われている現状です。もし、そのような大地震が発生し、しかも営業時間内に襲ってきたらどうなるでしょうか。震度7以上の激しい揺れで建物が倒壊する可能性が高く、さらには津波警報が発令される事態となれば・・・。そのような非常時、自社では誰がどのように指示を出し、どのような対策を講じるのか。従業員の安全は確保できるのか。自社の建物はどのような被害を受けるのか。必要な情報は適切に管理され、取引先との関係を保てるのか。こうした問いへの備えが、いま、急務となっています。
会社運営には労働契約法に基づく「安全配慮義務」という法律があります。これは、企業が従業員の安全と健康を守るために必要な配慮や措置を講じる義務を負っていることを意味します。具体的には、職場の安全性を確保し、災害や事故が発生した際には速やかに適切な対応を行うことが求められます。従業員が安心して働ける環境を維持することは、企業の社会的責任であり、信頼を守るための重要な要素です。逆に言えば、従業員の安全と健康を守るための措置がなされていない場合には「安全配慮義務違反」として罰せられる可能性があります。
この安全配慮義務に対する備えとしても、事業継続力強化計画は必要不可欠です。南海トラフ地震のような大規模災害が発生した場合に備え、従業員の安全確保や迅速な事業再開のための計画を整えることは、単なる危機対応にとどまらず、長期的に企業を存続させるための大切な基盤となります。だからこそ、今、事業継続力強化計画を策定することが、企業の将来を守るための一歩となるのです。
では、どのようなことを想定し計画にまとめるのか。それはヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源に基づいて計画します。事業継続は経営資源ありきです。故にこの経営資源が災害時にどのうようになり、どのように復旧していくのかという視点がキーとなります。
たとえば「ヒト」の面では、従業員の安否確認や安全確保の方法を明確にしておく必要があります。非常時には誰がどのような指示を出すのか、従業員がどのように避難し、どこに集合するのかなど、具体的な対応策が求められます。
「モノ」に関しては、設備や施設、重要な機器が被災した場合の対応を計画します。建物の損壊や機器の破損を想定し、代替手段や仮設施設の確保、早期復旧の手順を整備することが重要です。
「カネ」の面では、事業継続に必要な資金の確保が不可欠です。災害による売上減少や緊急修理費用などを想定し、予備資金や保険の活用を計画に含めます。
「情報」については、災害時における連絡手段や重要なデータの保護が求められます。通信が途絶した際の情報伝達方法や、サーバー・データのバックアップ体制など、重要情報を迅速かつ確実に管理できる体制を整える必要があります。
こうした経営資源を軸に災害時の影響を想定し、復旧までのステップを明確にすることで、事業継続力強化計画はより実効性を増すのです。
何よりも優先すべきは、従業員の安否確認とその家族の安否確認です。安否確認システムは備えていますか?連絡先の定期的な更新はできていますか?人命を第一に考え、次に取引先や社会に対する責任を果たすために、持続的な事業継続の力をつけていきたいですね。
とはいえ、どのように策定すればいいか迷われる方も多いかと思います。中小企業庁ではマニュアルを公開していますが、読むには時間もパワーも必要ですし、具体的なきっかけも欠かせません。しかし事業継続力強化計画はBCP(ビジネスコンティニュイティプラン)作成に比べ策定しやすい計画です。BCPは迅速に事業を再開するための具体的な手順をまとめた計画です。一方、事業継続力強化計画は、中小企業が災害や非常事態に対する基本的な備えを強化するための指針として、より幅広く設けられた計画です。BCPが具体的な対応手順に重点を置くのに対し、事業継続力強化計画は、主に事前準備や経営資源の強化を中心に据え、特に中小企業が自社の持続的成長を支えるための土台作りを目的としています。
絶対に後悔しないためにも、いざという災害に備え事業を継続できる力をつけていきましょう。私たち認定支援機関がサポートいたします。お任せください。
企業にとって、未来を予測することは難しくても、備えることは可能です。その備えがあるからこそ、従業員も取引先も、そして地域社会も安心して企業を支え続けてくれるのです。小さな一歩でも、未来の危機に立ち向かう力をともに築き、企業の信頼と持続可能性を高めていきましょう。そして何より大切なのは、従業員の命を守ることです。私たちと共に、いざという時の備えをしっかりと整えましょう。