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中野満の日記

繰り返す日々に見つける小さな変化 – PERFECT DAYS

2025.01.13 Mon

映画『PERFECT DAYS』は、静かで規則正しい日々を繰り返す、平山という男の物語です。彼は渋谷区にある公共トイレの清掃をする仕事をしています。朝は神社のほうきの音で目覚め、歯を磨き、植木に水をやり、カフェオレを買って車に乗り込む。そして、お気に入りのカセットテープを再生しながら清掃に向かいます。休日にはコインランドリーや古本屋に足を運び、少しだけ特別な飲み屋で一杯を楽しむ。どこにでもありそうな、特別でない日々。しかし、彼のルーティンにはどこか満たされた空気が漂っています。

この映画が語る「繰り返すこと」の価値に「働くこと」を重ね、思いを馳せてみたいと思います。

繰り返しがもたらす安心感

ルーティンを持つことは、時に退屈と捉えられることがあります。しかし、繰り返しには心を落ち着け、安心感をもたらす力があります。平山が朝、同じ時間に目覚め、同じ道を通ることは、彼の日常に一定のリズムを生み出し、生活を支える基盤となっています。「働くこと」は繰り返しの中で自分なりのペースを見つけることができるようになります。繰り返しとは無意識の力からくる、続けることへの源泉かもしれません。

繰り返しの中に潜む小さな変化

平山には公衆トイレの清掃の休憩中、公園のベンチで腰をかけ、アナログカメラで木漏れ日を撮影するルーティンがあります。その現像を楽しみに待つ姿には、「今この瞬間」への尊さを感じます。その瞬間をフィルムに焼き付け、完成するまでの時間を待つ。その過程そのものが、日々の中に小さなワクワクを生み出しています。撮影してすぐに見ることのできる「今」より、過ぎ去った「今」を感じることに価値があるのだと思います。

同じことを繰り返しているようで、日々は少しずつ違います。平山がトイレ清掃の合間に見つける木漏れ日や、ふと聞こえる風の音。それらは、彼の仕事の中にひそむ特別な瞬間です。ルーティンは、その変化を見つけるための舞台であり、気づく心を育む場でもあるように感じます。

働く中で私たちは、自分たちの舞台で目の前の作業に追われ、小さな変化や喜びを見逃してしまいます。しかし、同じ業務の中でも、自分なりの工夫や成長を見つけることができたなら、それは「特別な一日」になるのかもしれません。働くというルーティンの中で大きな期待を求めず、小さな変化を求めることで、繰り返しが大好きになるのかもしれません。

働くことと生活のリズム

平山は、働いた後には銭湯に行き、飲み屋で酎ハイを楽しむ時間を欠かしません。そのルーティンは、働き続けるためのエネルギーを補充する時間でもあります。仕事がどれだけ忙しくても、自分をリセットする時間を持つことの大切さを、彼は教えてくれます。

私たちも、仕事に追われる日々の中で、自分を癒すための時間や空間を大切にしたいものです。それがあることで、また明日も繰り返しの中に戻る力が湧いてくるのです。働くことを繰り返すには自分を癒してあげる時間が必要です。派手でなくていいです。小さな楽しみで。なにより、繰り返すことが楽しくなります。

繰り返しを尊ぶということ

平山の繰り返しの日々には、一つだけ迷いが生じる瞬間があります。それは、かけるカセットテープを選ぶときです。日々規則正しくルーティンをこなす中で、この選択の自由さが、彼の生活に彩りと個性を与えています。

『PERFECT DAYS』で流れる音楽は、平山が日々の中で唯一「選ぶ」ものです。その選択は彼の個性を映し出し、彼の日常に彩りを与えています。同じルーティンでも、自分だけの楽しみやこだわりを加えることで、日常はただの繰り返しではなくなります。

働く中でも、少しの工夫や意識を加えることで、単調に思える仕事が自分だけのものに変わります。それは、自分のルーティンを愛し、日々を大切にすることでもあります。

繰り返すことがパーフェクトデイズ

平山の繰り返しの日々は、一見地味で何の変哲もないように見えます。しかし、そこには彼が選び取った「幸せ」が詰まっています。忙しさに追われがちな現代の私たちも、平山のように繰り返しの中にある小さな変化や喜びを見つけることで、日々を豊かにすることができるのではないでしょうか。

「繰り返すこと」は決して退屈なことではありません。その中に尊さを見いだせるとき、私たちは本当に「パーフェクトな日々」を手に入れるのかもしれません。

映画『PERFECT DAYS』が私たちに教えてくれるのは、繰り返す日々の中にも美しさが宿るということです。ルーティンの中で小さな変化を見つけ、そこに喜びを感じることが、忙しい現代を生きる私たちにとってどれほど大切か。この映画は、その気づきを静かに語りかけてくれます。

 

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